東川アウトドアフェスティバル

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2014年11月3日月曜日

「Wonder Mountains」 DVD作品


何作かある映像作品の中で、「ゴキゲン山映像」として作ってる山関係の作品は「Littlest Mountains」「Littlest Mountains 2」「Littlest Mountains 3」。それから今回の「Wonder Mountains」が4作目です。

 いわゆる山映像って2通りあると思ってて。ひとつは誰かモデルさんがいて、登っていく様子を追いかけていくもの。もうひとつはひたすらキレイな風景を淡々と映し出すもの。自分の映像は基本的に前者で、山の麓からだんだん上がって行く様子を描いてます。だけど説明やナレーションは入れていません。入れると見てくれる人の感想を固定することになっちゃうから。

 見る人はそれぞれ、山に対する考えもスタンスも違うだろうし。きっと同じ映像を見ても重ね合わせるものが違ってくる。その違いを楽しんで欲しいと思ってます。

 たぶん自分は動きのあるものが好きなんだと思います。山をただ写しているだけなら写真でいいかなって思ってくる。映像作品ならではの面白さを出すためには、被写体かカメラのどちらかが動いていた方がおもしろいと思ってます。

 あと、撮影上の技術的なことにはトライしていきたいです。たとえば今回は全体の4分の3くらいをRAWモードっていう色の階調が豊かになる形式で撮影してます。データはものすごく重くなるけど、フィルムで撮ったような深い色味を出したかったんです。

 新しい撮影技術に関しては付録パートの「Wonder World」がその集大成。やりたかったことは全部あそこに集約しました。むしろそのぶん、本編の方はオーソドックスな作りになってるかも。遊んだ付録と本筋の本編、っていう感じ。

 「Wonder Mountains」で収録してるのは白馬、八ヶ岳、屋久島、日光白根山、穂高連峰、下の廊下、上高地、立山連邦のエリア。たぶん形も景色も広がり具合も北海道の山とは全然違うんだろうけど、それぞれを北海道の人たちがどう捕らえてくれるのかすごく楽しみです。是非とも感想を聞かせてください。

Beyond the Mountains


これは南アルプスの間ノ岳(あいのだけ)から北側を見たところ。右側のでかいのが北岳(きただけ)で、真ん中の奥にある三角形が甲斐駒ヶ岳(かいこまがたけ)、左のちょっとなだらかなのが仙丈ヶ岳(せんじょうがたけ)。左奥の雲海の先に見えるのは北アルプスかな。撮影したのは2014年の7月の末。よく晴れた気持ちのいい日で、北岳に向けって雲が谷から沸き上がってくるのが印象的だった。

 本職は映像作家だし、映像は何を撮ろうって思うのはすぐ決められるけど、写真はまだまだ試行錯誤が続いてる。ただ、映像は動きを出すことを意識して撮るようにしてるのと、撮影の時もまず映像を撮って納得してから写真を撮るようにしてる。そうするとやっぱり写真にも映像で動きを出そうとしたことの何かが残るのかもしれないなって思うようになってきた。この写真は南アルプスらしい風景だし、とても奥行き感があって好きな写真。

Reason of Hike


撮ったのはずいぶん前で「littlest mountain(リトレストマウンテン)」の3に出たから、2011年の8月かな。場所は白馬。唐松岳(からまつだけ)の頂上山荘から八方尾根(はっぽうおね)の方に下りていったところ。
 凧を揚げたのに理由はなくて、山の上でやったらおもしろい画が撮れるんじゃないかと思って。実際やってみたら風が巻いててなかなか揚がらないもんで、思ってたような楽しさではなかったんだけどね。でもできあがりの映像は動きも変化もあって、まぁ悪くはなかった。
 やっぱりちょっと変わったことしたい、変わった画を作りたいっていうのは常にあるかな。それでいろんな工夫したり、新しい表現手法を取り入れていくのが楽しいよね。

こんにち山


これは「Beyond the Mountains」を撮った次の日。北岳から見たら八ヶ岳が雲の上に浮いてた。いちばん右のでかいのが赤岳(あかだけ)で、その左のギザギザが横岳(よこだけ)、そこからなだらかに硫黄岳(いおうだけ)に続くんだけど、手前の阿弥陀岳(あみだだけ)がじゃまして見えないね。その左奥に霞んでる台形の山は浅間山(あさまやま)だと思う。夏の早朝で、谷という谷が全部雲で埋め尽くされててホントに海みたい。そこに八ヶ岳がポッカリ浮いてて、景色も遠くまで見わたせる日だった。

 いつもそうなんだけど、自分の撮影の時は仕事とは思ってなくて。自分が楽しんで山に行ってて、その中で印象にのこるものを写真や映像で残していければいいなぁって思ってる。この写真を見て「山に行く理由が詰まってる」って言われたことがあるけど、確かにこの景色は山に行かないと見れない。言われて初めて、自分がこの写真を好きな理由がわかった気がした。

ひかり


これも唐松岳。やっぱり動きを出したくて夜中の1時から3時くらいまで撮影してたんだけど、同じタイミングでカメラのシャッターも開けっ放しにしてたら映像とは違った感じで動きが出た。
 画面の右端に細かい光がもつれたようになってるのはテントを畳んでる人がいて、そのヘッドライトの軌跡。で、ちょうどカメラの前が登山道で、人も通るからそのヘッドライトのあかりも写ってた。
 それから真ん中の奥にあるのは唐松岳の頂上。そこに続く登山道を誰かが歩いてる光も写り込んでる。なんだかたくさんの人が歩いてるみたいだけど、長い時間かけて撮ってるからそう見えるだけで、実は2~3人の明かり。
 やっぱり写真でも動きがあるとおもしろい。いろんな要素が詰まってて、荒々しくて好きな写真。

星の騒宴


これは白馬岳(しろうまだけ)。そのすぐ下にある明かりが「白馬山荘」で、手前にあるのが「白馬岳頂上宿舎」とそのテント場。撮ったのは去年の8月かな。

 ちょうど星がきれいだったし、この狭いところにいろんな色のテントがごちゃごちゃ張ってあるのを上から撮ったらおもしろいかなと思って、機材だけ持って登山道を上ったところから撮った写真。

 自分では完全な大自然の写真よりも、その中に人工物を入れる方が好き。だからテントもパラパラあるよりも、これくらいぎゅっと詰まってる方がいい。その方が存在感が出るし、人なんかもフレームの中にはいっぱいいてくれた方がいい。映像中心だから、その方が動きが出ておもしろい画になるんだよね。